「今期は経常利益〇〇万円を目指そう」「今期は売上〇億円を目指そう」
社員の方に、こう伝えていませんか? 会社全体の目標としては良くても、社員一人ひとりの目標としては、うまく機能しないことが少なくありません。
この記事では、社員の目標を「限界利益」に置くとよい理由と、限界利益を現場で管理していく4つの手順をお話しします。
この記事でわかること
- 経常利益や売上を社員の目標にすると、うまくいかない理由
- 社員の目標を限界利益に置くとよい理由
- 限界利益を部門・担当者・顧客・商品ごとに管理していく4つの手順
おさらい:限界利益とは
限界利益は、売上から変動費(材料費、商品の仕入、外注費、販売手数料など、売上に比例して増減する費用)を引いた利益です。人件費や家賃などの固定費は、すべてこの限界利益の中から払い、上回った分だけが会社の利益として残ります。
- 限界利益 = 売上 − 変動費
- 利益 = 限界利益 − 固定費
限界利益と、決算書の粗利(売上総利益)との違いや、値上げの考え方は「限界利益とは?粗利との違いと、値上げで失敗しないための考え方」で詳しくお話ししています。
経常利益の目標では、社員は動きにくい
経常利益や純利益は、家賃や金利、税金など、社員が自分ではコントロールできない費用をすべて引いた後の数字です。これでは、「自分は何をどこまで頑張ればいいのか」が見えにくくなります(会社全体の目標としては良いと思います)。
売上だけの目標では、利益の出ない仕事が増える
社員が自分の努力で動かせるのは、売上と限界利益です。ただ、売上だけを目標にすると、値引きをしてでも受注を増やそうとして、利益の出ない仕事まで増えてしまうことがあります。売上は、儲けそのものではありません。
社員の目標は「限界利益」に置く
だからこそ、社員の目標は「限界利益」に置く。中小企業が社員の行動レベルにまで目標を浸透させるには、これが一番シンプルで良い方法だと思います。
限界利益は、経営者が値決めのときに見るだけの数字ではありません。現場の社員一人ひとりが、日々の仕事の中で意識してはじめて、会社の利益につながります。
現場で限界利益を管理していく4つの手順
限界利益を社員の目標にして、現場で管理していくには、次のような流れで進めます。
- 会社全体で必要な限界利益を決める
固定費と、目標とする利益を足したものが、会社として稼ぐべき限界利益です。会社全体の経常利益の目標を、限界利益の目標に置き換えます。 - 部門・担当者・顧客・商品ごとに分ける
必要な限界利益を、部門や担当者、顧客、商品ごとの目標に割り振ります。社員一人ひとりが「自分はいくら稼げばよいか」をわかる状態にします。 - 見積・受注の段階で、限界利益率を確かめる
仕事ごとに変動費を見積もり、限界利益と限界利益率を出してから値段を決めます。基準を下回る仕事は、値決めを見直すか、受けるかどうかを判断します。 - 毎月、目標と実績を比べる
部門・担当者・顧客ごとの限界利益の実績を毎月出して共有し、目標との差が出た理由と、次の手を話し合います。変動費が上がった商品は、限界利益率がどう変わったかも確認します。
当事務所でご支援している、自社で物流を担う卸売業のお客様では、車両1台ごとに売上と変動費を出し、限界利益と限界利益率を毎月つかめるようにしています。それが、設備投資の判断の土台になっています(お客様の事例:卸売業(自社物流)のお客様)。
まずは確かめたいこと
いきなり完璧な仕組みを作る必要はありません。まずは、社員の目標について次のことを確かめてみてください。
- 社員が自分で動かせる数字になっているか?
- その数字は、会社の儲けにつながっているか?
まとめ:限界利益を、現場の目標にする
- 経常利益は、社員が自分ではコントロールできない費用を引いた後の数字。社員の目標にすると「何をどこまで頑張ればいいか」が見えにくい
- 売上だけを目標にすると、利益の出ない仕事まで増えてしまうことがある
- 社員の目標は、自分で動かせて儲けにも直結する限界利益に置き、部門・担当者・顧客・商品ごとに毎月、目標と実績を確かめる
トルシーダでは、財務顧問として、会社全体で必要な限界利益の計画づくりから、毎月の目標と実績の振り返りまでを一緒に行っています。